ご寄稿

“若人の太鼓に賭けるその思い

府中の森から征(ゆ)けや世界へ”

私が “だげきだん” の皆様に初めてお会いしたのは、2017年の夏、佐渡でのアース セレブレーション芸術祭の会場でした。鮮やかなオレンジ色のTシャツを着た、小麦色に陽焼けした体格の良い若者数名が、これまたしっかりと陽焼けした代表の八木敦子さんに引率されて、鼓童さんの展示スペースに置いてあった当社の電子担ぎ桶太鼓試作品1号機を丁寧に見ていただいている時でした。

私はその時、初めて皆さんにお会いしたにもかかわらず、何かとても懐かしい、自分が昔、四国愛媛のの松山市で、地元のお祭りに参加しながら部活に明け暮れていた中学生の頃を思い出して、太鼓だけでなく日々の生活や将来の夢など、色々な質問をしたことを今でも覚えています。

それから八木さんとの交流も始まって、2018年、2019年と府中での “だげきだん“ Anniversary 公演にも続けてご招待いただき、わずか1年半の間に、創作作品や舞台演出、転換の手際良さや心温まる司会進行に至るまで、あらゆる面で大きく成長されているその姿に非常に心を打たれました。

私が “だげきだん” の中で最も好きなところは、太鼓の練習という、ある意味ストイックで辛い活動の中にある「笑い」と「ユーモア」です。筋肉トレーニングのために書いた練習曲が、MURIという創作曲に生まれ変わる、その剛さと柔らかさ。毎日お母さんに叱られてばかりいるけど、そのお母さんのことが実は大好きで、将来に希望を持ちながら毎日努力を続けている息子たち。私にはそれがとても眩しく輝いているように感じます。

ローランドは現在、2020年の東京オリンピックに向けて、本格的な電子和太鼓を開発中です。まだ量産化の一歩手前ですが、それが完成した暁には、是非とも “だげきだん” の皆様にも使っていただいて、雨や天候にも左右されない、持ち運びも軽くて簡単で、いつでもどこでも同じ音が出せる和太鼓を是非愛用していただきたいと考えています。

電子楽器はまだこの世に出て50年足らずですが、その多様な音色と合理的な操作性で、それまで長きにわたって楽しまれてきた音楽の形や表現の幅を変えてきました。電子和太鼓は、日本の伝統文化を継承し、敬いながらも、これからの時代に向けて、新たな価値と表現力を付け加え、和太鼓演奏人口の裾野を広げていきたいと考えています。

現在、“だげきだん” リトルチームで太鼓を学びはじめたお子さんたちが、やがて大きくなって、電子和太鼓を担いで世界の街を練り歩きながら、日本人がこれまで大切にしてきた「和」の心、自然を畏れ敬い仲間を大切にし、何かを成し遂げようとするその優しさと強さを、世界の人々に発信していただけるような時代が来るといいな、と、ここ静岡・浜松の地より心から願っています。

今後の皆様の更なるご活躍を期待しています。

第2回 “だげきだん” Anniversary 記念公演に寄せて

 

2019年2月3日 
ローランド株式会社 
本社第1開発部 部長 
西裕之